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ファーストディグリー

~ファーストステップ~

 

■日記をつける

朝起きたら、アルマ先生からのメモがまくらもとにあったの。

"町へ行って、日記帳とペンを買ってくること。自分が気に入ったものなら、どんなものでもいいですよ"

これってどういうことかしら?

よくわからないけど、とりあえず買ってくることにしようっと。
でも、どんな日記帳を買えばいいのかしら? 
自分の好きなのってあるから、わたしが気に入るものであればいいってことよね。

 

日記を買って帰ると、アルマ先生がお茶の用意をして、わたしを待っててくれたみたい。
どうして日記帳を買う必要があったのかしら? 聞いてみてもいいよね。


アルマ

「魔女にとって、毎日の記録をつけるって、とっても大切なことなのよ、メープル」

メープル「???」

アルマ

「日記をつけるということはその日一日をふりかえって、自分のしたこととかその日にあったことを思い出して、それについて考えたり、反省するのによい機会なの」

メープル「反省ですか?」

アルマ

「そうよ、メープル。人間って、毎日いろんなことがあると、ついつい新しいことに気をとられて、自分の失敗や悪いところをすぐに忘れてしまうの。楽しいこともそうよ。一日はとても短いけれど、その一日を積み重ねて人は人生を生きているの。その一日というのは二度とおとずれることのない貴重な時間でもあるのよ。どんなに平凡と思える一日でも同じ経験はないし、同じようにものごとを感じる日というのもないの。そして、わたしたちはその貴重な一日からいろんなことを学ぶことができるの。一日をふりかえって、自分にどんなことが起きて、まわりの人がどうであったか、それに対して自分がなにを考え、どう行動したのかを書きとめることによって自分を見つめなおすことは、とても大事なことなのよ」

メープル

「なるほど、そういうことなんですね。でも、ちょっとむずかしいような……」

アルマ

「そんなにむずかしく考えなくていいのよ。とにかく、夜ねる前に、きょうのことを思い出して、こんなことがあった、こんなことをした、そしてこう思ったって、それだけをすなおに書けばいいのよ」

メープル

「はいっ、 それなら、わたしにもできます! さっそく、きょうからがんばりまーす」

 

日記をつけて一か月たったわ。最初のころはなにを書いたらいいのかよくわからなかったんだけど、最近はたくさん書きたいことがあって、書くことがすごくおもしろくなってきたわ。
それから、少しずつ自分が変わってきた気がするの。なんでだろう、ただ日記をつけているだけなのに。
うん、これはね、日記を書きはじめてしばらくしてから、気がついたことなんだ。

知りたい?  

だったら、あなたも日記をつけてみるといいわよ。そうしたら、あなたにもわかるから。

 

日記帳を一冊、それからその日記を書くためのペンを買いましょう。日記帳もペンもあなたがこれだと思うものなら、なんでもかまいません。カギつきのごうかなものでもいいですし、ふつうのノートでもいいんですよ。これを使いたい、書くことが楽しそうと思えるものを選びましょう。

そして、その日から毎日日記をつけましょう。最初はなにを書いたらいいのかわからないかもしれませんね。まずは、朝起きてから夜ねるまで自分がなにをしたか、どんなできごとが身のまわりで起こったか、自分がどんなことを考えたり、感じたりしたのか、そこから始めてみましょう。毎日続けていくうちに、だんだん日記を書くのがじょうずになってくるはずですよ。

 

アルマ
「メープル、日記を書きはじめてどうですか?」
メープル
「はいっ、自分がいろいろ変わった気がします。いろんなことを考えるようになったし、今度はこうしようっていうような反省もたくさんするようになりました。」
アルマ
「そうね。日記を書くことは注意力や観察力をみがいたり、いろんなことを感じたり、考えたりする力をつける訓練でもあったのよ。」
メープル
「そうか、そうだったんですね!」
アルマ
「それでは次の段階に行きましょう。」
メープル
「次の段階?」

 

アルマ

「今度は、日記帳以外にノートを一冊用意しましょう。日記はこれまでどおり毎日つけていてちょうだいね。日記を書き終わったら、その日のできごとや自分の行動をいろいろと考えて評価するのよ」

メープル

「評価ですか?」

アルマ

「そう、評価よ。たとえば、あなたがきょうだれかとケンカをしたとするでしょう? そうしたら、どうしてケンカになったのか理由を考えてそこに書くの。そして、どうすればそのケンカをさけられたと思うか、本当はどういう行動をとればよかったと思うのか、実際の自分がとった行動はどうであったか、ということを書くのよ。もし、こうすれば一番よかったと思う行動を自分がとれていなかったとしたら、どうして自分がその行動をとれなかったのかその原因を考えて、それも書くの。これは、なにもよくなかったと思うことについてだけでなくて、自分がよいことをしたときもちゃんと書いて評価してあげるのよ」

メープル

「うわあ~、なんだかとってもたいへんそう……」

アルマ

「だいじょうぶ。日記を書くおもしろさがわかったあなたなら、そんなにむずかしいことではないはずよ」

メープル

「はい、とにかくやってみます。」

 

~セカンドステップ~

 

■森を散策する

アルマ

「日記を書きはじめて、自分の中でいろんな変化が起きたでしょう?」

メープル

「はい、ここに来る前よりいろんなことを感じたり、考えたりするようになって、自分のことをすごく冷静に見られるようになったし、あと、それから……。」

アルマ

「それから?」

メープル

「前より、いろんなことに感動するようになったような気がします。」

アルマ

「そう、それは魔女にとって、とても大切なことよ。」

メープル

「え、そうなんですか?」

アルマ

「魔女はいろんなことに敏感でないといけないの。それと心が豊かでないとね。心が豊かでないと、魔法は使えないのよ。だから魔女はたくさん感動して、感情や心をいつも豊かにしておく必要があるの。」

メープル

「なるほど……。」

アルマ

「では、そのためのレッスンに進みましょうね。」

 

アルマ先生から、さっそく次の課題を出されちゃった。

「森に行って、森の中のいろんなかおりをかいでいらっしゃい。そしてどんなかおりがしたか、あとでわたしにも教えてね。」ですって。

うーん、これがどうして感情や心を豊かにすることと関係があるのか、正直よくわからないなあ。

 

よくわからないままに、森の中を歩いてみる。森に来るのは初めてじゃないし、いつも通ってる道でもある。そういえば、かおりとかにおいって、あんまり考えたことなかったな。食べもののおいしいにおいなら、すぐにわかるんだけど 。

思い切って大きく息をすってみる。うん、いろんなかおりがする。気がつかなかったなあ、今まで森にこんなにたくさんのかおりがあるなんて。あっ、このにおいなんだろう?すごくいいかおり。あのかわいい花のにおいだ。すんごく甘くて、しあわせな気分になる。それから、なんていったらいいのかしら? とってもあたたかい懐かしいにおいがする。そう、すごく天気のいい日に、草の上に寝ころがったときのあのにおい。干し草のベッドの上で居眠りしちゃったときにかいだ、あの香りと同じ。

においにばかり気をとられていたけど、宿題はそれだけじゃなかったんだわ。いろんなものにもさわってらっしゃいって言われてたんだ。なに、ウルフったら、突然じゃれてきて。あ、今わかったんだけど、ウルフって毛がとってもふわふわであったかーい。気持ちいいね。それから、木の幹、そのぬくもり。木ってかたくてザラザラしてる。葉っぱも一枚一枚ちがうんだわ、手ざわりが。地面に手をあててみる……。しめっぽい。雨なんて降っていないのになんでだろう? ああ、ここは木かげだから、このあいだ降った雨が残っているんだ。だから、ここの土とあそこの土とさわった感じがちがうんだあ。

 

なんだかおなかがすいてきたな。あ、もうお昼なんだ。じゃあ、そろそろランチタイムにしよう。ええっと、どこで食べようかな。あ、あそこ、ちょうどいい切りかぶがあるわ。あの切りかぶにすわって食べよう。わーい、アルマ先生が早起きして作ってくれたおべんとうだあ。キャー! すごくおいしそう! なにから食べようかなあ。あっ、そうそう。ここでも課題があったんだっけ。うんうん、一つ一つどんな味がするのか、味わって食べることって言われたんだ。

うん、おいしい。これもすごくおいしい。やだ、あたし、それしか言いようがない。でも、このチーズもパンもめちゃおいしい。ジュースはどれどれ……。おいしい、これっていちぢくのジュースだ。あっ、野いちごとブルーベリーが入ってる。あまい。でも、ほのかにすっぱいなあ。
あ、いま気がついたけど、このおべんとう、あまいのやすっぱいのや、からいものなどいろんな味が楽しめるようになってたんだ。うんうん、いろんな味があったなあ。それから、ちゃんとわたしの好きなもの、知っててくれたんだあ、アルマ先生ってば。

ウルフ「ワンワン、ワッフォン!」 

いけない、ウルフ、おまえもおなかすいているよね。わすれてて、ごめん。

 

さて、食事もすんだし、ほかの課題は……。

「メープル、心を静かにして、耳をすましておいでなさい。いろんな音や声を聞いてくるのよ。」
「はい、先生。」
思わずそうつぶやいて、言われたわけでもないのに、なんとなく目を閉じてみたりする。
ああ、聞こえる。鳥のさえずりだ。あれはなんの鳥だろう? あっ、一羽だけじゃないみたい。高い声、低い声、なんかいろいろある。にぎやかで、仲間と遊んでいるのかなあ? あっ、行ってしまった……。

なんだろう、あれは? 葉がそよぐ音? 風の音だわ。木の枝がしなっている。あ、リスかしら。枝をちょこまかと走り回ってる。ウルフが走り回る足音。それから、これは・かれ葉の上を歩くわたしの足音だったわ。
気がつかなかった! 水の音も聞こえる。どこからだろう? こんな近くに小川なんてあったかしら? 

 

そうそう、これをわすれちゃいけないわ。アルマ先生に、森の中にどんな色があるのか、調べてきなさいって言われてたんだ。
森の中の色ねえ……。緑一色じゃないかなと思うんだけど……。ほかにどんな色があるのかな? 
あ、この木の葉っぱとあっちの木の葉っぱとでは、同じ緑でもぜんぜんちがうんだわ。へえ、知らなかった。それから、この木。同じ木の葉っぱなのに、上のほうと下のほうでは色がちがうみたい。若葉とそうでない葉とも色がちがうんだわ。それと木の幹の色も一本一ちがう。ああ、そうなんだ。


見上げると、光がキラキラと反射してる。うわあ、あそこ、木もれ日が光っていて、すごくきれい。キャー、すてき、すてき! 木もれ日が地面を照らしてて、なんていうか、すごーい魔法の聖域みたいよ! 
森にはこんなにいろんな色があるんだ。。そうだ、草原のほうはどうだろう。あそこにはたくさんのお花があるわ。きっと、もっとたくさんの色があるはず。


行こう、ウルフ! かけっこだよ。

 

お花の色って、本当にきれい。黄色に青に赤にピンク、なんてきれいなんだろう。色とりどりでいろんな色がまじりあって、見ていてとてもきれい。


ああ、気持ちいいなあ。ねっころがっちゃえ。あまいかおりがただよってくる。花のかおりだ。どの花のかおりなのかなあ。このかおりをかいでいるとまるで天国にいるようないい気分になってくるなあ。それから、ちょっとしめった大地は草のじゅうたんみたい。なんていうのかな、まるでお母さんにだっこされているみたい。風がほほをなでていく……。サワサワと風の声。空の色もきれい。雲の形もいろいろあるんだなあ。空って広いなあ。どこまで続いているんだろう? 空の色もたくさんある。うすい水色。こい青、だんだんと色が変わってくるみたい。少しオレンジのバラのような色もある……。

 

ウルフ「ワン、ワン、ワン!」

ウルフの声ではっとさせられちゃった。ああ、もう夕暮れなんだ。時間がたつのってすごく早い。
ウルフはもう帰ろうよって、鳴いているみたい。へんなの。ウルフの鳴き声にもいろんな意味があるみたいだって、そう感じる。いままでは気がつかなかったことね。

 

アルマ

「おかえりなさい、メープル。」

メープル

「ただいま、もどりました。」

アルマ

「きょう一日、森の中を歩いてみてどうでした?」

メープル

「すっごく、楽しかったです! いろんなかおりがあって、いろんな音があって、たくさんの色があるんだなって、気づきました。なんだかいま、ものすごくしあわせな気分です。あ、それから、アルマ先生が作ってくれたおべんとう、とてもおいしかったです。」

アルマ

「そう、メープル。よかったわね。きょうのレッスンであなたはたくさんのことを学んだようね。」

メープル

「そうなんですか?」

アルマ

「ええ、人間はついつい毎日の生活の中で、いろんなことを見落としがちだけれど、魔女はそうしたふだん見のがしていることにも敏感でないといけないの。自然はいろんなかたちでわたしたちにいろんなことを教えてくれているのだから。そして、わたしたちは、五感を通して自然がわたしたちに送ってくれているいろんなメッセージを受けとることもできるの。だから、五感をするどくしてみがいておくことはとても大切なことなのよ。魔女は自然からのメッセージを受けとって、みんなのためにそのメッセージを使っていくのが大切な役割なのですからね。」

メープル

「自然からのメッセージですか?」

アルマ

「そうよ。それについては、これからあなたに教えることになるわね。」

 

★レッスン2★

あなたもメープルみたいに、身のまわりにあるいろんなもののにおいをかいでみましょう。家の中のにおい、町のにおい、花のかおり、香水やお香をかぐのもよいでしょう。そのにおいをかいで、どんな気持ちがしましたか? そして、どんなことを思い出しましたか?

また、メープルと同じように、身近にあるいろんなものにさわってみましょう。おふとんや洋服などのたくさんの布地、そして家の中にあるたくさんのもの、たとえばテーブルやイス、かべやタンス、ゆかやつくえなど。そして、植物やペットなどにもふれてみましょう。ひとつひとつさわった感じがちがいますね? それらはあたたかかったり、冷たかったり、ここちよかったりするでしょう? 


そして、それらのものにふれたとき、あなたはどんな思いをだきましたか? また、友だちと握手をしたとき、お母さんやお父さんの背中にふれたとき、どんなぬくもりがあなたの手の中に残りましたか? そのぬくもりを感じて、あなたはどんな気持ちになりましたか? 心があたたかくなりましたか? それともさびしくなったのでしょうか?

 

ごはんを食べるとき、おやつを食べるとき、なにかを飲むとき、その一つ一つの味のちがいを味わいましょう。食べものや飲みもの、くだものやあなたが好きなおやつにはそれぞれちがう味がありますよね。


それから、その食べものをだれが作ってくれたかも考えましょう。その食べものには作ってくれた人の気持ちが入っていませんか? その気持ちもいっしょに味わうこともわすれずにね

 

町なかや郊外に出かけていって、いろんな音や声に耳をすましてみましょう。さあ、どんな音や声があるでしょう? その音を聞いて、あなたはどんな気持ちになりましたか?

それから、音楽もたくさん聞きましょう。その音楽を聞いて、いろんなことを思うはずです。せつないですか? 楽しいですか? ワクワクしておどりだしたくなりましたか? 


もし、あなたが楽器をひけるなら、いろんな音を出してみましょう。好きな曲をひいたり、ひきたいと思う曲をひいてみましょう。そして、あなたが悲しいとき、うれしいとき、楽しいとき、その気持ちをあらわす曲をひいてみたり、自分でそんな曲を作ってみましょう。楽器がひけない人は、歌ってみましょう。悲しいときに歌いたくなる歌、楽しいときに歌いたくなる歌、そのときの気持ちをメロディーにたくすことをしてみましょう。そうすれば、音にも感情があるっていうことがわかるようになりますよ。

 

家の中にある色、町や野原や自然の中にある色をたくさん見つけてみましょう。それから、きれいな景色もたくさんさがしてみましょう。すてきだと思う景色、美しいと思う景色をいろんな景色の中から見つけることができるはずです。いろんな色を見たり、たくさんの景色を見つけて、自分がどう感じるのかを楽しんでみましょう。

 

~サードステップ~

 

■たくさんの本を読む

アルマ

「今週は本を十冊読むのがノルマよ、メープル。」

メープル

「ええっ、十冊も読むんですかあ? 」

アルマ

「ええそう。本はなんでもいいけど、自分が感動しそうなものを選んでね。マンガでもいいのよ。でも、ぜんぶマンガにする場合は、二十冊を目標にね。図書館への地図はここよ、メープル。それから、映画かドラマのビデオを一日最低一本は必ず見ること。これが今週のあなたへの宿題よ。」

メープル

「よかった。わたし、マンガと映画は大好きなんです! そんな宿題なら大かんげいです。」

アルマ

「ただし、条件があるわ。泣けそうなもの、笑えそうなもの、いかりを感じそうなもの、つまらなさそうなもの、考えさせられそうなもの、ハッピーな気分にひたれそうなもの、冒険ができそうなもの。この条件を満たすものをそれぞれ選ぶのよ。」

メープル

「うーん、条件つきですか? さがすのたいへんそう。でも、がんばりまーす。」

 

アルマ

「あら、メープル。目がまっかね。」

メープル

「ぜんぶ読みました、見ました、アルマ先生。」

アルマ

「そう。で、なにかおもしろいお話はあったかしら?」

メープル

「たくさんありました。最後に見た映画はとにかく泣けちゃって、もうなんだか悲しくて……う、う……。」

アルマ

「おやまあ。だいじょうぶ?」

メープル

「でも、おととい見たのは、もうドキドキハラハラで、主人公といっしょになってキャーキャー言ってました。それから、いちばん最初に読んだ本はものすごくいろんなことを考えさせられちゃいました。主人公の生き方に共感したといいますか……。それから、それから、ああ、もうアルマ先生に話したくてたまらないことがたくさんあります!」

 

アルマ

「メープル、よかったわね。あなたは本や映画をとおして、たくさんのことを学んだのよ。それから、自分以外の人になりきって、いろんなことを考えたり、経験したりしたの。つまり、架空の物語を通じてあなたはいろんな人生を体験してみたということよ。これはとっても大切な魔女の修行なの。この修行の目的はね、ひとつは他人の立場や考えを理解したり、いろんな人がいて、いろんな人生と世界があるのを知ることなのよ。そして、もうひとつはものをイメージする想像力を養ったり、考える能力を育てること。それから、最後のこれが一番大切なことなのだけど、泣いたり、笑ったり、怒りを感じたり、共感したり、納得できないと疑問を感じたり、いろんな感情を経験することで、心の筋肉をきたえることなのよ。 」

メープル

「えっー、そうだったんですか?」

アルマ

「そうよ。とても大切なことなのよ。ふつう人間はね、自分を基準にしてしかものごとをとらえたり考えたりすることしかできないの。そうすると、どうしても自分のことしかわからないのよね。他人の気持ちやどうして他人がそうするかということや、ほかの人にもちがう人生があるんだってことがなかなか理解できないのよ。けれどね、メープル。本や映画を読んだり見たりすることで、わたしたちは自分の知らないいろんなことがこの世にはたくさんあるんだってことを知ることができるの。身近なできごとでも自分以外の人が見るとまったく別の物語になってしまうんだってこともね。それからね、物語の主人公の中には、感情移入できる人もいれば共感できない人もいたでしょう?」

メープル

「はい、そのとおりです。残念だけど、みんなは好きになれなくて、なんでこの人こうなのかなあ、わたしだったらこうするのにって、そう思ったこともたくさんありました。」

アルマ

「ええ、そう。すべての人があなたと同じことをしないってことね。人はみんな性格がちがうの。感じ方も考え方もね。人はそれぞれ別の人生を生きているし、同じような体験をしても、それをとおして考えることや行動のしかたも違うのだということをわたしたちは物語から知ることができるのよ。すごいわね。」

メープル

「はい、ほんとうにすごいですね。」

アルマ

「そう思ったら、これからもたくさん本を読みましょうね。映画もたくさん見ましょう。そして、自分が経験できないことを知ったり、自分以外の人の考えていることや人生を学びましょうね。」

 

★レッスン3★

たくさんの本を読みましょう。小説でも伝記でも、どんな本でもよいのです。もちろんマンガだってオーケーです。そして、映画もたくさん見ましょう。

いろんな主人公の気持ちになって、笑ったり、泣いたり、おこったり、喜んだりを経験しましょう。いろんなことを思って、考えて、せつなくなって、そして夢見る楽しさを味わいましょう。

 

~フォースステップ~

 

■七つのことばだけで会話する

朝起きたら、またしてもアルマ先生からのメモがまくらもとにあったの。

"メープル、きょうから一週間、次の七つのことばだけを使って過ごしなさい。ほかのことばはぜったいに使ってはいけませんよ。"

七つのことばだけ? これってどういうことかしら?
「こんにちは。ごきげんよう。さようなら。ありがとう。ごめんなさい。はい。いいえ。」
だけですって! 

 

アルマ

「メープル、朝食のしたくができましたよ。」

メープル

「はーい。」

アルマ

「たまごは半熟のほう? それともこちらのかたゆでがいい?」

メープル

「は、……(うっ、どうしよう。七つのことば以外使っちゃいけないんだっけ)。」

アルマ

「どちらにしますか?」

メープル

「(そっか、指でさす方法があったわ)はいっ!」

アルマ

「半熟がいいのね。」

メープル

「はい。」

アルマ

「では、めしあがれ。」

メープル

「はい、いただきますっ! あっ、しまった!」

アルマ

「メープル。」

メープル

「……ありがとう!」

アルマ

「よろしい。」


(うわあ、前途多難だわ。七つのことばだけで会話することがこんなにもむずかしいことだなんて……。)

 

ああ、本当にたいへん。使えることばが七つしかないから、アルマ先生と話すときはまだいいけど、町へお買い物に行ったり、おとなりのおくさんとお話するとき、すごくこまってしまう。

だけど、へんね。同じことばでも、言い方一つでまったくちがったことばに聞こえるのよ。たとえば「ありがとう」ということばにもいろんな使い方があるみたい。元気よく笑顔で言うときと、すまなさそうに言う場合では、相手の反応もちがう気がするの。


ことばにもいろんな表情があるんだってこと、同じことばでもその表情をつけることによって使い分けができるんだってことに気づいたわ。

 

アルマ

「一週間たちましたね、メープル。もうきょうからはほかのことばを使ってもいいですよ。」

メープル

「はい。(ほっ、よかった~!)」

アルマ

「さて、七つのことばだけで一週間を過ごしてみてどんなことがわかりましたか?」

メープル

「はい、同じことばでも、ことばにいろんな意味をもたせられるんだってことに気づきました。話すことばには命があって、それは使う人によって与えられるんだって思いました。」

アルマ

「いいことに気がついたわね、メープル。そのとおりよ。ことばは生きものなのよ。ことばは使う人が命を与えてこそ、人に気持ちを伝えることができるの。」

メープル

「なるほど、すごくよくわかります。」

アルマ

「そのとおりよ、メープル。」

 

アルマ

「大切なのは、ことばそのものじゃない。そのことばにこめられた気持ちなの。ことばに気持ちをこめることができれば、相手に伝えるということも可能になってくるわ。そして、ことばに表情があるということを知れば、そのことばの裏にある意味を読みとることができるようになるの。これはとっても大切な訓練なの。なぜって、ことばも魔法だからよ。」

メープル

「えっ、 ことばも魔法なんですか?」


アルマ

「そうよ、ことばは魔法なの。魔法では呪文をよく使うでしょう? 呪文はことばそのものなのよ。この呪文を使いこなせるようになるには、ことばがもっている意味をよく知らないとだめなの。」

メープル

「だから、このレッスンはとても大切なんですね。」

アルマ

「そのとおりよ、メープル。」

 

★レッスン4★

メープルみたいに一週間七つのことばだけで過ごしなさい、なんてことをするのは、みなさんのふだんの生活ではたぶんむりだと思います。

そうですね、この七つのことばを使うとき、そのことばをどんなときに使っているか、注意してみましょう。自分が使うとき、家族の人が使うとき、そして身近な人が使っているときなど。そのことばが使われるとき、あなたはそのことばを聞いて、どんな気持ちになりましたか?  そのことばを使った人が、あなたもしくはそのことばを言った相手になにを伝えたくてそのことばを使ったのか考えてみましょう。

 
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